妖怪生物学的大百足考
注:「妖怪生物学」とは、武村政春氏が著作「ろくろ首考 妖怪の生物学」の中で、提唱された擬似学問で、空想の存在である妖怪を生物として捉える試みです。
まず、大百足の特徴として
1.その名の通り巨大な百足の姿をした妖怪である
2.琵琶湖の淡水魚を主食とした肉食である
3.矢も弾き返す固い外皮に覆われている
4.人間の唾液に弱い
以上の4点を挙げてみた。
1.については「三上山を七巻き半」という表現からもわかるように全長は数十kmに及ぶものと考えられる。現存する世界最大の百足でも20cmそこそこであるからその巨大さは異常すぎる。ゴジラもウルトラマンもこの大百足と比べれば可愛いものだ。この大きさに匹敵するものは琵琶湖を一跨ぎしたと言われるダイダラボッチくらいのものであろうか。
また通常、百足はコウロギやワームなどを主食とした肉食の虫であるが、その巨体を維持するためには2.のことも必要と考えられる。むしろ、その勢いは琵琶湖の魚たちを絶滅に追い込む勢いであったかもしれない。
しかし、ここで問題にしたいのは3.と4.である。これらは両方とも大百足の外皮に関する事柄である。これだけの巨体であるからその自重を支えるためには強固な外皮が必要となるであろうから3.のことは必要があったのであろう。しかし、その外皮が人間の唾で溶けるとはどういうことであろうか。
唾液の成分といえば、食物に含まれるデンプンを分解する酵素であるアミラーゼが有名である。では、大百足の外皮はデンプンで構成されていると言うのだろうか?しかし、ただのデンプンでは強度が明らかに足りない。もしデンプンで構成されているのであれば、大百足の体はその自重に耐え切れずに崩壊してしまうだろう。
では、この強度不足をどう補うか?それを解き明かすためにはまず、アミラーゼがどのようにしてデンプンを分解するのかについて語ろう。デンプンとは二種類以上の糖類が多数結合した多糖類であり、「α1-4グリコシド結合」または「α1-6グリコシド結合」によって結合されている。アミラーゼはこの結合を加水分解と言う方法で断ち切るのである。
このことを念頭においてもう一度考えてみよう。デンプンはこの糖の鎖が不規則に縺れ合っている状態である。では、この糖の鎖を規則正しく編めばどうなるだろうか。つまりは糖の鎖帷子(クサリカタビラ)である。
グルコース(ブドウ糖)を一直線にα1-4グリコシド結合で継ぎ合わせた多糖類をアミロースと呼ぶ。通常、アミロースは100〜1000個のグルコースからなる短い繊維であるが、これをもっと天文学的な数のグルコースを継ぎ合わせそれを規則正しく編み合わせれば、必要な強度を実現できないだろうか?こうして構成された外皮であれば普通の矢では弾きかえされ、唾液を塗った矢が突き刺さったことも納得できるのではと考える。
注:以上の文は、私、河本けふへゐが未熟な生化学の知識を使って導き出した仮説であり、真偽のほどは全く不明である。ただの戯言として受け取ってもらいたい。(^_^;)